【低解約返戻保険名義変更】というとピンとくる方も多いのではないでしょうか?

2008年ごろ、法人のお金を個人のお金に“上手に”移転することを営業話法とし、一部の外資系保険会社が法人向けに販売していた生命保険があります。

具体的には、契約者法人、被保険者役員、受取人法人の定期保険を利用します。この保険の特徴は2年程度は解約返戻金が極端に少なく、3年程すると、一気に解約返戻金が上昇するものです。

例えば、保険料が1500万円として、契約初年度から2年程度は解約返戻金が850万円程度と極端に少ないのですが、3年経過後の解約返戻金は4200万円と突然激増するものです。

これいった生命保険は低解約返戻生命保険と呼ばれています

保険料の取扱いは、定期の生命保険として、1/2が損金で、1/2が積立金となります。上記の例では年間1500万円の保険料のうち、750万円が損金となり、750万円が損金とはならず保険積立金となることになります。

問題は、2年程度のうちはこの保険の解約返戻金が極めて少なく、かつ、その後に急激に増加するところです。

これを悪用して次のような営業話法がとられていました。上記の保険をモデルとしますと次の通りです。

2年間は法人契約として保険料を支払います。その後、保険契約を個人(役員)に売却します。保険契約の評価は解約返戻金ですので850万円です。3年目は個人が保険料を支払います。1500万円は大金ですので、この保険の契約者貸付により支払います。そして3回目の支払後、すぐに解約し急激に上昇した解約返戻金4200万円を手にします(契約者貸付1500万円と相殺し手取りは2700万円)。

つまり個人としては実質0円の保険料負担で2700万円を手にするのです。

さらに、個人が取得した解約返戻金は一時所得であるので、きちんと申告すべきです。

ところが、当時の法令と通達並びにその取扱いの説明書では、一時所得の計算上の支出した金額に「個人が支払った保険料だけではなく法人が支払った保険料も含める」というものでした※1。

したがって、一部の保険会社とその代理店は、一時所得の計算上、所得はないので税金もない。無税で、2700万円を手に入れられると主張していました。

でも、どう考えてもおかしいですよね。

法人で損金となり、かつ、個人でも支出した金額となるとは、二重で控除を認めているではないですか。

当時、私は、極めて危険なスキームだと感じ、そのため絶対にこうしたスキームを利用せず、断固として拒否していました。

案の定、2012年ごろに最高裁判例で、法人と個人の二重控除は認められないと明確になりました。

あせったのは、この営業話法で保険を販売していた生命保険代理店でしょう。

事実、私のまわりの納税者が被害にあいました。(つづく)

※1 所得税法34②、所得税法施行令183②二、所得税基本通達34-4(平成24改正前)

参考資料 ~ここが変だよ!日本の税制。所得税、法人税、消費税をめぐる問題点疑問点を考察する~ 千葉県税理士会松戸支部 第10回千葉県税理士会シンポジウム