【軽減税率】生活必需品の消費税率を他の財やサービスの消費税率より低くする税政策を導入する場合、低く定められた消費税率を軽減税率といいます。平成25年12月政府与党は、将来消費税を10%と増税する時に軽減税率制度を導入すると決めました。目的は低所得者層への配慮といわれます(※1)。ここで一つの疑問が生まれます。本当に軽減税率導入が低所得者層への配慮となるのでしょうか。

低所得者層へ配慮となるという論理は次の通りと考えられます。消費税増税により可処分所得が減る。生活必需品については軽減税率であれば、生活必需品は消費税増税による値上げがないので、影響が少ない。低所得者層は収入のうち生活必需品に対する支出の占める割合が大きいので、生活の配慮となる。
この論理は正しいでしょうか?

消費税増税により事業者は、H26/4以降は商品を8%の消費税率で仕入ます。一方、軽減税率制度が適用されていると、商品を販売する場合は軽減税率は5%です。その場合、事業者は差額を補てんするために、商品を値上げするのではないでしょうか。

仮に、事業者が仕入れる商品にも軽減税率が適用され5%で仕入れることができたとしても、商品の本体以外の製造・運送・保管・管理等の費用までも軽減税率の対象となるのでしょうか。

【消費税率改正その4】でも論じましたが、非課税や軽減税率といった複数税率が本当に生活の配慮となっているか議論が必要であろうと考えます。また軽減税率の論点は他にも、どの商品を軽減税率とすべきかという線引きの論点、軽減税率による税収減少の論点や事務負担増大の論点があります※2。適用の是非についてはより慎重に議論が必要であると考えます。

※1 公明党HP26.1.2(http://www.komei.or.jp/campaign/nipponsaiken/tax/index.php)
※2 「消費税の複数税率をめぐる論点」, 財政金融課(加藤慶一), 2013 他