【税務調査手法と租税裁判】税務調査の手法が問われた有名な裁判例である平成12年2月25日京都地方裁判所判決を紹介しましょう。原告である納税者は、京都で衣料品小売業を営む青色申告の事業者です。京都店と唐橋店で事業をしていました。この京都店は1階が店舗、2階が親族の居所となっていました。平成4年3月30日事前通知なく5名の国税調査官が京都店に現れ、身分証明書を提示したうえで国税調査に来たと告げました。その時原告は大阪に仕入れのため出張し京都店には不在の状況であり、そのかわり京都店には原告の長姉と母と従業員がいました。長姉は原告が不在であることを調査官に告げ、そのため日を改めて税務調査に来てほしい旨を再三にわたり要請しました。しかし調査官はその要請を無視して調査を開始しました。やがて調査官は京都店の2階である原告の親族の居所を調査したいと申出ました。これに対して長姉は、2階はプライベートな部屋であるとして調査されることを強く拒みました。そうこうするうちに、その場にいた原告の母が2階に上がっていきました。それを見た調査官が不審に思い勝手に後をつけ2階に強引に上がりこみました。そして2階で母がコタツの上にあった売上メモを持っていたところ、調査官はその提示を求め、強引に奪い取り上げ、さらに母や長姉の許可なくタンスやベットの下の引き出しを検査し始めました。あげくは、母や長姉が強く拒否しているにもかかわらず、下着の入った引出しに手を入れかき回しました。他にも調査官は、京都店の従業員に命令口調でレジの現金を数えさせ、承諾もなくレジの隣にあった引出しを取り上げ、その中にあった帳簿書類の調査を始めました。その後、騒ぎを聞きつけた民主商工会の職員らから激しい抗議を受けたため、調査官らは京都店を退出しました。
 同日、事前通知なく調査官3名が唐橋店に現れ、身分証を提示したうえで国税調査をする旨を告げました。唐橋店には原告の妻がいましたが、原告は不在のため、妻は調査官に出直してほしい旨を返答しました。ところが調査官はその要請を無視し調査を開始しました。やがて昼食から戻った従業員が私物であるバックをレジの隣に置きました。調査官はそのバックをみつけ「それは何や、見せろ」といいました。これに対してその従業員が拒否したところ、それにもかかわらずバックを取り上げ、中身を調査し始め、手帳を取り出しページをめくり見始めました。そのためその従業員は「私のや。」といい、バックと手帳を取り返しました。その後も調査は継続しました。やがて京都店での民主商工会の職員が唐橋店に電話をし、妻に調査官に帰るよう助言したので、ようやく妻は明確に調査への協力を拒否しました。その結果、調査官らは唐橋店を退出しました。
 翌日、原告らは、この調査について抗議をし、かつ抗議文を提出しました。そして、その後の調査のすべてを完全に拒否しました。一方、調査は原告らの抗議を無視し続行しました。ただし、調査協力が得られず、また調査に際しては原告らが写真を取ったり、第三者を立ち会わせるなどの調査妨害があるため、帳簿書類を確認することができませんでした。
 その結果、下京税務署長は、原告に対して所得税法150条1項1号に基づき、青色申告承認取消処分をしました。これに対して原告は税務調査が違法なものであるとして、青色申告承認取消処分の取消を求めて、裁判となりました。
 この裁判の争点はどこにありますでしょうか?また判決はどうなるでしょうか?(続く